楠山正雄
底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年4月10日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:佳代子
楠山正雄
一
これも大国主命(おおくにぬしのみこと)が、八千矛(やちほこ)をつえについて、国々(くにぐに)をめぐって歩(ある)いておいでになる時(とき)のことでした。ある時(とき)摂津国(せっつのくに)の難波(なにわ)の津(つ)までおいでになりますと、見慣(みな)れない神(かみ)さまが、海(うみ)を渡(わた)って向(む)こうからやって来(き)ました。命(みこと)が、
「あなたはだれです。」
とお聞(き)きになりますと、その神(かみ)さまは、
「わたしは新羅(しらぎ)の国(くに)からはるばる渡(わた)って来(き)た天日矛命(あまのひぼこのみこと)というものです。どうぞこの国(くに)の中で、わたしの住(す)む土地(とち)を貸(か)して頂(いただ)きたい。」
と頼(たの)みました。