赤い玉

楠山正雄

赤い玉書籍情報

底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年4月10日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:佳代子

赤い玉 6

楠山正雄

 この百姓(ひゃくしょう)は谷(たに)の間(あいだ)に田を作(つく)っていました。ある日そこで働(はたら)いている男たちの食(た)べ物(もの)を牛(うし)に背負(せお)わせて運(はこ)んで行きますと、ふと王子(おうじ)の天日矛(あまのひぼこ)に途中(とちゅう)で出会(であ)いました。王子(おうじ)は百姓(ひゃくしょう)が人通(ひとどお)りのない谷奥(たにおく)へ牛(うし)を引(ひ)いて行くのを妙(みょう)に思(おも)って、
「これこれ、牛(うし)を引(ひ)いてどこへ行くのだ。谷底(たにそこ)の人のいない所(ところ)で、殺(ころ)して食(た)べるつもりだろう。」
 といいながら、百姓(ひゃくしょう)をつかまえて、牢屋(ろうや)へ連(つ)れて行こうとしました。